乳と卵

乳と卵

乳と卵

乳と卵を読んだ。芥川賞を受賞した川上未映子さんの本。豊胸手術を受けるために東京に出てきた母親とその娘の話。母親はなぜか分からないが豊胸手術を受けることに夢中になっていて(それが『女』としての自信回復のためなのかなんなのか理由はわからんけど)、中学生の娘はそんな母親に葛藤して『女』になることを拒否する。これは自身の生理を汚いものだと考え、子供なんて生まなくて良いと考えていることから伺える。話自体は割りとシンプルなんだけど、面白いのは話が展開される場所。その親子は大阪から東京の姉妹の家に泊まっているのだが、そこが『三ノ輪』駅の近くの小さな1畳のアパート。そして姉妹の職業は最後まで語られることは無いが、恐らく住んでいる場所を考えると吉原で働いている水商売。ちなみに、娘の母親も大阪で場末のホステスをやっている。この背景があるから、いっそう本質的に『女』とは何か考えさせる作りになっている。これがもし社会的に地位の高い母と子の設定で、青山の高級マンションとかで話が展開されていたら、深みがなくなるんだろうと思う。レイ・チョウの「プリミティヴへの情熱」にもある通り、人間は原始的なものに惹かれる。社会的なものを取っ払って、その中で本質的な『女』とは何か考えさせてくる辺りが面白いなと思った。