プリミティブへの情熱

レイ・チョウの『プリミティブへの情熱』に書かれているように、人間は原始的なもの、昔ながらのものに惹かれてしまう傾向がある。


例えば、昔から地方に伝承されている話を農家の女達から聞き出し、それを編纂して作られたと言われているグリム童話はあまりにも有名ですが、実はこのグリム童話は農家の女達からではなく、地主の使用人やメイドなどから聞き出し話なのです。農家の女とは最下級の身分であり、言語らしい言語をしゃべることができないはずなのです。にもかかわらず、『農家の女達』農家=土と日々接しており、純粋無垢であり、女=生命の源、こういったイメージを喚起することから、『農家の女達』から聞いた話になったようです。地主の使用人のおっさんや、メイドの話では何だかピンと来ないですもんね。


映画化された『三丁目の夕日』は同じストーリーで設定を『今』にしても、きっと現代人の心に訴えかけられないでしょう。ストーリーと一緒に『あの時』の景色が浮かぶから、団塊世代のおっさんはグッと来るのでしょう。


人間の短い歴史の中で培われたものとして、このように意識していようといまいと人間を特定の状態・思考にさせる頭の中のギミック、仕掛けは沢山あります。返報性も然り。それらに振り回されるのではなく、それらの仕掛けをうまく使うことで、面白いことができるんじゃないかなーと思ってます。